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2008年1月27日 (日)

2007年の原油市場と今後の見通し

以前ライオンズで各分野についての「昨年の総括と今年の見通し」をまとめようという企画があり、良い機会なので取り組んでみた。結局皆忙しいのか揃いそうもないので、以下鮮度が落ちないうちに正月にまとめたものを掲載してみる。最近ブログでちゃんとした分析もしてなかったので調度良かったし。

-----2007年の原油市場と今後の見通し--------------

 当該分野において2007年最大の出来事といえば,原油価格の歴史的上昇である.そこには近年大きな要因として挙げられる投機筋の動きや地政学的リスクも含まれるが,本稿においては実際に資源を生産および消費するアクターの動向に注目して考察を行った.

080127crudeprice(2007年の原油価格の動き - 出所: WTRG Economics)

 まず2007年末の世界における原油の確認埋蔵量は,昨年比1.1%1.3兆バレルとなり,引き続きそのポテンシャルを維持する結果となった.地域別には西ヨーロッパが510%程確認埋蔵量を減らしたものの,北米や中南米等における埋蔵量の増加がそれを補っている.尚OPECは新たにアンゴラが参加したことによりその確認埋蔵量の世界シェアを僅かに拡大し,原油ではほぼ7割,天然ガスでも5割超を占めている.

 一方,原油の世界生産については2006年に引き続いて減少が見られる.全体における減少は2006年比で0.4%であり,西ヨーロッパが特に顕著で610%の減少,中東では全体で2.6%減となっており,ロシアおよびアフリカが増産となったものの全体を押し上げるには至らなかった.但しこれはOPEC2006年末に決定した減産合意が影響しており,生産能力がピークに達したとの見方は時期尚早である.

 このように原油市場においては需給のファンダメンタルズはそれほど大きな変化が見られなかったものの,2007年の生産側,消費側双方の政策の動向は大きかった.それはメディアにも度々特集され,一般にも定着した「資源ナショナリズム」を巡る攻防である.幕を開けたのはロシアからベラルーシへの原油輸送に関する係争であり,ここで資源の売り手の優位性が明らかになったかと思うと,次にサハリン2事業の国有化に見られるように地中に眠る資源そのものへのアクセスも制限し始めたのである.このように資源を戦略的に用いる動きがボリビア,ベネズエラ,ブラジル,カザフスタンといった広範囲に急速に広がり始めていった.TIME誌が,2007年の世界に最も大きなインパクトを与えた人物としてロシアのプーチン大統領を選んだのも,エネルギーを巡る国際政治のパラダイム変化を重要視したためであろう.

 結果として,消費国は限定された地域への資源獲得を巡って激しい争奪戦を展開することとなった.特に中国,インドといった国内に旺盛な需要を抱える国々にとっては資源獲得は死活的に重要であり,国営企業が豊富な資金力と国家の後ろ盾によってなりふり構わぬ戦略を進めている.このため,日本のように国内に資源を持たざる消費国には,自主開発可能地域は大水深域や重質油田といったアクセスは可能だが技術的・経済的に困難な地域に限定されるようになっている.更に2007年には高油価を反映し,これまで政府取り分やロイヤリティーが優遇されていたカナダのオイルサンド,アメリカの大水深地域で是正検討の動きが生まれている.他方,消費国側では不必要で過度な競争を避けるために協調の動きも見せ始めており,中印韓の国営石油企業間では探鉱開発や人材育成に関する協力合意が結ばれている.また日本においてもインドとは石油ガス協力に関する合意が結ばれ,中国とは新日石とCNPC社の間で資源開発や新エネ分野での長期協力に関する合意が結ばれた.またアメリカを始めとして世界的に原油在庫が減少しており,IEAが呼びかけているように省エネに関する協力も今後具体的に進むと思われる.

 さて,明けて間もない2008年だが,原油価格はいきなり1バレル100ドルを突破して始まった.これはサブプライムローン問題の影響で証券市場からのカネが流れ込んだこと,OPECの増産見送り米国の在庫減少が主な原因と見られている.これまでの原油の1バレル当たり平均価格(WTIスポット)は2003年に31.1ドル,2004年に41.5ドル,2005年に56.6ドル,2006年に66.0ドル,そして2007年は72.3ドルとなっている.この法則が続けば2008年の平均油価は80ドル台で推移することになり,実際にドイツ銀行などはそのような予測を打ち出している.更に,突発的に市場を逼迫させる要因として,近年猛威を振るったハリケーンや産油国を含んだ地政学的リスクの高まりにより,油価は容易に1バレル100ドルを再度超えると見られている.但し,非OPECの生産増と,アメリカの自動車燃費効率向上によりガソリン消費がピークを迎えることから,油価は今後減少していくとの見方もある.

 また,短期的に原油市場に影響を与えるものとしてはバイオ燃料が想定されるが,果たしてその影響力はどうだろうか.20079月のOECD会議で提示されたRichard DoornboschRonald Steenblikの二人の研究者による論文では,楽観的シナリオにおいてもバイオ燃料による液体燃料代替は2050年で13%程度にしかならないと見ている.これはIEA予測に沿ったものであるが,既に表面化している食品価格の上昇などより幅広い経済へのマイナス側面も懸念されている.またセルロース系バイオ燃料については経済性の問題から期待は更に低い.加えて論文ではサトウキビを除くバイオ燃料製造や助成金をも含めた経済性および環境面への効果について疑義を唱えている.同時期に発表されたAccenture社が20カ国を調査して作成したレポートでも,バイオ燃料の今後の普及拡大には相当程度の技術開発の進展が必要としており,その負担先として石油産業が適当としている.いずれにしても2008年における原油市場に与えるインパクトは低く,むしろこれまで迷う事無く進められてきた各国の振興策がどう見直されるかが注目である.

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コメント

原油市場のファンダメンタルを考える際に、下記のリスクも考慮した方が良いと思います。
http://video.google.com/videoplay?docid=-5531771243763964471

投稿: | 2008年2月 5日 (火) 17時01分

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