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2005年6月 1日 (水)

ロビン・サコダ氏の講演(前国務副長官補佐)

さて、気を取り直して、今日出た会議の内容をアップします。

-日米安保同盟 東アジアにおける挑戦と展望-

講師: ロビン・H・サコダ (アーミテージ・インターナショナル パートナー)

司会: 渡辺恒雄 (読売社長ではない。三井物産戦略研究所 主任研究員)

まず冒頭に、サコダ氏が東アジアにおける将来の不安定要素を幾つか列挙し、また最近における東アジアの動きに対しての見解を述べました。

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彼の挙げた将来(2015-2020年)の東アジアの不安定要素としては、

     途上国がグローバル化の動きにキャッチアップできるか

     グローバル経済が成長し続けるか

     中国の台頭がどうなるか

     エネルギーの需給

     地域全体における高齢化

     地方と中央の格差および政治的安定

     アメリカが超大国でいられるか

というところです。

中でも重点は中国の台頭であり、地域全体に対するポジティブな見通しもあれば、ネガティブな見通しとして地域の不安定要因になったり北京がコントロールできなくなるような結果も考えられるとの事です。そして中国をengageするためには日本だけでも米国だけでも単独では難しく、協力の必要性を説いていました。

更に東アジア共同体についても完走を述べており、最近来日したアーミテージ氏と同様に米国を隔離するような動きには賛成できないという懸念を示していました。この点はQ&Aで詳しく話していたので後述します。

さて、冒頭のプレゼンはあっさり終わってしまったのですが、Q&Aは意外に盛り上がりました。出席者もベテランの専門家が多かったせいもあります。

[在韓米軍の縮小]

まず韓国におけるアメリカ軍の縮小の是非についての質問があり、内容はかなり細かかったのですが、要は駐日米軍にも関係する部署を無くしてしまったために、機能的には疑問が残るとの話でした。ここら辺はトランスフォーメーションとか在韓・在日米軍についての資料を読み込む必要があります。

[東アジア共同体]

次に東アジア共同体におけるアメリカの態度ですが、冒頭で氏が述べたように「アメリカは東アジアにdeep interestがある」と強調しておりました。ただ、アーミテージ氏もそうだったのですが、この理由が曖昧で「排除される」という懸念は言うもののどういう状態を「排除」というのか不明ですし、「ASEAN+3と同じでアジェンダがないじゃないか」と言ってもこれから長期的なビジョンを作っていく集まりという趣旨が強いために批判は余り意味がありません。この辺の曖昧さを、例えば「NAFTAは排他的じゃないか」と突っ込まれると「NAFTAは目的がはっきりしている」という違いを出して、結局は「プロセスが透明でオープンであれば問題ない」という見解を示していました。印象に残ったのは、東アジアにおけるアメリカのdeep interestは確かに強いな、という点とそのdeep interestを現地人とは言え他人および完全には信頼できない中国に任せてしまうことの危うさをかなり懸念してるのだな、という感じがしたことです。今後年末のサミットが近づくにつれて、アメリカ側の意見がどう具体化していくか、注目する必要があります。ちなみに関連で、日本-アメリカのFTAについては、やはり議論として「日本の農業が開放できるのか」という点がアメリカで湧き上がる可能性が大きく、現状は難しいとの見通しでした。

[新アーミテージレポート]

サコダ氏は2000年に発表されたナイ・アーミテージレポートに関わってましたが、最近その第二段に取り組んでいるとのことで少し話しがありました。これまで政権で、まさにレポートの内容に取り組んできたわけで、今回政権を離れたことで一段落してレポートに取り組んでいくようです。現在のところ打合せを一回行っただけですが、年末にかけて発表するとの事でここら辺で今日話したような2020年の将来図なんかも入ってくるかと思います。そういえば岡田代表の外交ビジョンも2015年当たりの将来を想定しているらしいのですが、そこら辺の記述がほとんど無く「ちゃんと分析しているのか」という意見があったのを思い出しました。

[在沖縄米軍の縮小]

この問題はアーミテージ氏もサコダ氏も同様に普天間からの移転を早急にする必要を主張しています。ただ、当初の予定だった辺野古への移転は現状難しく、アメリカ側だけでなく日本側の対処の遅れからSACOの取り決めが止まってしまっています。そこで沖縄側の不満も考慮してサコダ氏は今回も沖縄に出かけたようで、今日出席していた沖縄の国会議員の話にも真剣に聞き入ってました。ただ、その議員が「なぜ沖縄じゃなくてはいけないのか」と質問した際に、アーミテージ氏は同様の質問に「location, location, location」とつまり立地の重要性を説いていたのに対して、サコダ氏は「日本政府に聞く質問ではないのか。我々は受け入れてくれる所ならどこでもwelcomeだよ」といった回答でした。これも本音なのでしょうが、沖縄が海兵隊の訓練地として最適であるとの声も多く聞いたことがあり、改めて沖縄の地理的優位性を再考しなければと感じました。

[北朝鮮の核問題]

まず最近の核実験の可能性に関してはやはりやや楽観的です。理由としても、北朝鮮が核爆弾を1つ以上持っているかどうか、また実験の場合も国連が動きやすくなることから北朝鮮にメリットが少ない点を挙げているのはアーミテージ氏同様です。ただ興味深かったのは「アメリカ-北朝鮮との二国間協議の是非」と「中国の怠慢さに関して」の議論であって、前者は1994年にあったように日本と韓国を差し置いて交渉し、カネだけ出させるようなプロセスは日韓が望んでいないのではないかという見方です。確かに、今回6カ国協議を望んでいるのはアメリカよりは日韓の意向が強いでしょう。また影響力のあるはずの中国が動いていないという議論は確かによくありますが、まず「本当に中国の影響力があるのか」ということを再考しなければいけないし、中国だけを責めるのではなく例えば日本も拉致の問題で核疑惑の議論を拡散させてはいないか、という考えはなるほどと思いました。今後の見通しとしてはやや曖昧で、皆で協力していくといった感じでしょうか。

[中国の軍事力拡大]

最後に、不安定要素の大きな要因の一つである中国の軍事力拡大を具体的にどう見るか、という点ですが防衛関係の人が中国軍のエリア的拡大を話していましたが、集中力も途切れていたせいか、この点回答も良く理解できませんでした。しかしながら!アメリカが中国の軍事力の拡大をどう想定しているかというのはかなり重要な話で、また議会調査局のレポートなんかで調べたいと思います。ちなみ中国の今後の見通しとしては三つ。自分の道を進んでいくのか、協調的になるのか、もしくは破綻してしまうのか。もちろんベストは二番目でワーストは三番目です。これらシナリオをどう良いほうに持っていくか、いつもながらの大きな課題です。

以上、本当に良い刺激になりました。合掌。

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